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2025.06.26

伝統と現代らしさが共存する、不易流行を体現する器づくり~福珠窯~

有田焼窯元として、伝統の中に新しさを感じるデザインを追求する「福珠窯」。創業以来大切にされてきたものを守りながらも、新しい変化を取り入れていくその姿勢は、まさに「不易流行」という言葉がぴったりです。

そんな福珠窯の大切にしている考えや、現社長が生み出した新しい「染付×銀彩」シリーズ、有田・伊万里の若手経営者たちのチーム「NEXTRAD」での活動についてお伺いしました。

創業から大切に受け継がれる「福珠窯らしさ」とは

有田焼窯元として、創業以来「細部まで手を抜かない、丁寧で上質なものづくり」を掲げる福珠窯は、伝統の中に新しさを感じるデザインを追求しながら、いつの時代、どの世代にも美しいと感じられる器づくりを目指されています。

 

17世紀初頭に有田で焼かれた素朴な作風が魅力の「初期伊万里」や、同時期に中国の景徳鎮で焼かれた「古染付」の影響を強く受けた作風は、その良さを消すことなく現代まで続いており、三代目となる福田社長のもと、さらに使いやすい形へと進化を遂げています。

器づくりにおける細かなディテールの部分は、その時代時代によって変わっているものの、「末永く愛用される器づくりを」という芯の部分は、現在も変わることのなく持ち続けている想いなのだそうです。

(左)染錦地紋丸紋 (中)染錦更紗紋 (右)天啓花蝶

「日々の暮らしがちょっとだけ豊かになる普段使いの器」として毎日使っていただけるのが理想だというの福珠窯の器。

中でも、染付や赤絵を用いた手描きの器は特に好評で、蝶と花をモチーフにした「天啓花蝶」シリーズをはじめ、染付の青色と色絵を組み合わせた「染錦」という技法を用いたシリーズは特に人気なのだそうです。

手描きの絵付けにこだわり、機械による精密さではなく、人の揺らぎを残すことで器に温かみを感じさせる、そんな器の魅力に多くのファンがいらっしゃるのも納得です。

機械を使わず、全て手書きで作り上げられる器

福珠窯の染付の色は、福珠窯が独自で調合している「柞灰釉(いすばいゆ)」によって表現されているのをご存知でしょうか。

 

柞灰釉とは、江戸時代の古伊万里にも使われていた釉薬です。その釉調(陶磁器の表面に施された釉薬の色や光沢、質感など)に魅力を感じていた初代が、江戸時代の調合を研究し、二代目と共に様々な原料を分析しながら吟味、その釉薬調合を確立させた、まさに福珠窯らしさを形作るもの。

創業当初は一般的な釉薬を使用されていたそうですが、初代がレシピを確立してからは、全て自社で調合した柞灰釉を使っているそうです。

 

福珠窯の柞灰釉にしか出せない染付の色の柔らかさと、しっとりとした手触りが福珠窯の魅力のベースになっているということで、改めて他の染付の器と見比べてみるのも面白いかもしれません。

伝統とモダンが共存する「染付×銀彩」の誕生

「染付×銀彩」シリーズの器たち

「日常使いできる器」を掲げて作陶されている福珠窯ですが、一方で特別感のある器の展開もされています。それが、古くから馴染みのある染付に、モダンな銀彩を組み合わせた「染付×銀彩」シリーズです。

モダンになりすぎず、かといって古すぎることのない、絶妙なバランスで仕上げられた器たちは、プロの料理人をはじめ、器好き、コーディネート好きの方々にも大変人気です。

絵付けの様子(現社長 福田雄介様)

印象的な「染付×銀彩」シリーズは現社長が考案されたものですが、ご本人曰く、「私自身はゼロから何かを生み出すデザインは得意ではなく、その才能があるとも思っていません。その代わりに、「何か」と「何か」の断片を掛け合わせ、編集的にデザインを生み出すことは昔から得意でした。」とのこと。

 

染付も銀彩も、元をたどると福珠窯が持っていた技法の一つ。これらの技法の一つ一つは特別新しいものではなく、独自性のあるものでもないとのことで、実際に先代も染付と銀彩を用いた作品を作っておられたそうです。それを福田社長が「もっと福珠窯らしいものに出来るのでは」と考え、ブラッシュアップして作り出されたのが、現行の「染付×銀彩」シリーズです。

2018有田国際陶磁展・産業陶磁器部門で経済産業大臣賞を受賞した「染付銀蘭手9寸平皿」

こちらのシリーズを生み出す際に福田社長は、「福珠窯らしい染付」と「華美過ぎない美しさを持つ銀彩」を掛け合わせたときの、何とも言えない雰囲気と高揚感に、のめり込んで試行錯誤を続けたことを今でも覚えているそうです。

古くから大切にされてきた技術に新しい感性を加えながらも、決してやりすぎないバランス感覚こそが、新たな魅力の器を生み出したと言えます。いつまでも変わらない本質的なもの(不易)を大切にし、その中に新しい変化を取り入れていく、という意味の「不易流行」という言葉がまさに体現されているのではないでしょうか。

 

現在もプロの料理人をはじめ、プロのテーブルコーディネーターにも大変人気の「染付×銀彩」シリーズの器は、2018有田国際陶磁展・産業陶磁器部門で最優秀にあたる「経済産業大臣賞」を受賞され、福珠窯を代表するシリーズのひとつとして、たくさんの方に愛される器として人気を博しています。

産地の未来を醸成する、窯元の若手が集うチーム「NEXTRAD」

NEXTRADに参画されている13の窯元の皆様

伊万里・有田の産地の中には、窯元の若手経営者及び後継者など13名で構成される「NEXTRAD」というチームがあり、福珠窯も参画されています。

 

NEXTRADとは、「次代(NEXT)の伝統(TRADITION)を考え、若手集団であるからこそ革新的(RADICAL)に取り組もう」という想いから名づけられた名前です。チームのミッションとして、各窯で作陶している商品そのものを広めるのではなく、働く人や場所、歴史や文化の魅力を感じてもらい、産地に関わるファンを増やすということを目的に、産地と業界全体のPRとしてオープンファクトリーを企画開催するなど、様々な取り組みをされています。

 

また、SDGsを念頭に置き、次の100年に向けて産地をどのように発展させていくか、残していくかといった議題を通じて、産地全体での共通の価値観の醸成や意識向上にも努めておられるそうです。

NEXTRADのリーダーを務められている福泉窯の下村様に、チーム内での福田社長の様子をお伺いしました。

 

下村様曰く、NEXTRADの活動を通じて窯元同士話す機会が増えることで、自分の窯のことを中心に考えていた視点から、産地のことや有田焼業界のことなど、より広い視野で議論に取り組んでくれているように感じる、とのこと。

また、実際に福田社長ご自身も、同世代の仲間と業界の未来を見据え、問題点や課題を議論し共有できていること自体を非常に有意義なものであると感じておられるそうで、参画している窯の皆様が良い刺激を与えあいながら活動されている様子がうかがえます。

 

よりよい未来にむかってできることを模索し、柔軟に器づくりを続けている福珠窯。今後の活動にも、ぜひご注目ください。

株式会社 福珠陶苑
住所:佐賀県西松浦郡有田町中樽2-30-16
TEL:0955-42-5277
HP:http://www.fukujugama.co.jp/
ECサイト:https://store.shopping.yahoo.co.jp/fukujugama/
SNS:Instagram
担当コーディネーター

食空間プロデューサー/ FSPJスクール銀座校講師
伊藤 裕美子(YUMIKO ITO)

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