金沢と銀座を拠点に
金箔で奏でるヤマハタワー
銀座中央通りに輝きを放つヤマハタワー。FSPJ銀座Studioからも徒歩2分の場所にある銀座のランドマーク的な存在です。上を見上げると建物のファザードがキラキラと不規則な旋律を奏でるように輝いているのがお分かりいただけるかと思います。金箔ガラスの総枚数は1500枚。1枚1枚に細かな金箔を振りかけるという職人の地道な手作業により完成しました。
建材として華やかさと耐久性を兼ね備えた技術革新により、ヤマハタワー以外にも日本を代表するホテルや商業観光施設、住設機器等、個性と高級感を表現する素材として「金沢箔」は高く評価されています。
1975年に石川県金沢市で創業した金箔メーカー「箔一」
それまで神社仏閣関連に使用されてきた金箔のイメージを覆し地域ブランドへと成長、今なお革新を続けています。
「食」「建」「美」と業界を超えた箔一の取り組みを紐解いていきたいと思います。
伝統工芸を食卓に
日常も特別な日へと変化
この日訪れたのは、東京銀座の歌舞伎座のすぐ隣にある法人向けのショールーム。予約をすれば一般の方も訪れることが出来ます。
ここには食・建・美に関する様々な展示がありました。
まず目に留まったのは「食」のシーンを演出するテーブルウェアの数々。伝統工芸だけに鑑賞するものととらわれがちですが、お祝いや特別な日を演出してくれるのはもちろんのこと、使う人の日々の食卓を輝かせたいと、日常にも使いやすい工夫が沢山ありました。
その一つが人気商品の「HAKU LA TABLE」のテーブルマットです。日常使いをするためには取り扱いのしやすさが重要、こちらは見た目の印象よりも薄くて軽い!これなら頻繁に食卓に登場させたくなる、そんな商品でした。
ブランドディレクターに聞く
職人技が生み出す古代のロマン
今まで廃棄されてしまっていた金箔を ‘サスティナブルラジュアリー’という概念の下で生まれたのが「StarDust」「世界最古のキトラ古墳に描かれる天空図の星々をイメージして、ガラスの中に星屑のように金箔をちりばめました」と話してくれたのは、 箔一のブランドディレクターの鶴本さん。
こちらも職人の手作業により、ひとつとして同じ星空というものはないそうです。(6/1から三越伊勢丹の一部の店舗で先行発売)
また箔よる濃淡が、繊細な模様と陰影を作りだしている「Five Senses」(コースター)
中国古代の陰陽五行の思想に基づいたコンセプトで、自然界にある四季折々のテクスチャーを表現しているそうです。
手に取ってみても、吸い込まれそうな輝き。特殊加工や配合、貼り方を変えるなど、ここにも独自の技術と職人技が光っていました。
「伝統工芸を鑑賞するものとしてとらえるのではなく、日常に取り入れることでより豊かなライフスタイルを送ってほしい、日常も特別な日へと変化していきます」とお話いただきました。
四季の移ろいを楽しみながら、自然界や古代に思いを馳せてロマンを感じる日常の食卓を演出したいものですね。
伝統美の継承と革新のストーリーは
女性の美から始まった
創業者浅野邦子氏が、箔製造の技術を応用した金箔打紙製法の「あぶらとり紙」で特許を取得、箔一の歴史は、実は女性ならではの視点からのスタートでした。
ショールームの洗面所にもあぶらとり紙が常備しており、細やかな気配りと配慮を感じる企業スタンスに感動しました。
今では女性の「美」に関わる様々な金箔化粧品を世界の女性たちに送り届けています。
また、目でも美味しい料理に一役かっている「食用金箔」やコーティングされた「アラザンシュガー」「アニバーサリー金箔」等、こちらも「食」の分野で大人気。盛り付けの仕上げに気軽に取り入れることが出来るうえ、SNS映えするとスタイリングを楽しむ人が増えています。
食したり、肌に直接触れたりするものだからこそ、品質や安全性が求められる分野への取り組み、企業としての信頼性も高く評価されています。
このように「金箔」を軸としながらも、伝統を守り継承していくことはもちろん、新たな価値や可能性を世界に向けて発信し続けている箔一。今後も様々な場面で私たちの「食」「建」「美」に関わり、輝かせてくれるに違いありません。
FSPJ ACADEMY ディレクター
大谷和美(KAZUMI OYA)