
繊維の世界で長くものづくりを続けてきたスタイレム瀧定大阪株式会社(以下、スタイレム瀧定大阪)から生まれた日本を感じる紙の器〈asanoha〉(アサノハ)。
創業から160年の歴史を持つ繊維専門商社が、なぜ「紙皿」を開発したのでしょうか。
その背景には、サステナブル素材としての「国産大麻(ヘンプ)」との出会い、そして日本の文化や産業を次の世代へつなぎたいという強い思いがありました。
デザインの美しさだけでなく、使う前も、使った後も、未来までを見据えたasanohaのストーリーを伺いました。
サステナブルを追求する中で辿り着いた素材-麻の文化を未来へつなぐ

asanohaには、その商品名ともなっている「麻(ヘンプ)」が原料の一部に使われています。
スタイレム瀧定大阪は、素材を扱う企業として、環境配慮と実用性の両立という課題に長く向き合ってこられました。そうした中で、衣料用に環境負荷の少ない繊維原料として注目したのが「麻」だったそうです。

繊維化するための調査を進めるうちに、「麻」は、かつては衣・食・住を支えてきた身近な素材であり、現代でもなお、神社のしめ縄や鈴縄、相撲の横綱綱、天皇陛下の即位の礼で用いられる装束など、日本の伝統的な文化そのものであることを知ったとのこと。
この伝統を守り続けるためにも衣類に向けた繊維化への道を模索されますが、国内の紡績産業の衰退という厳しい現実に直面されたそうです。
しかし、そこで諦めず、今度は麻は和紙にも使われてきたという特性に着目し、「紙」での活かし方という新たな可能性を見出されました。紙糸を取り出す過程においても作物から繊維を取り出すという点で生地化への過程と共通することから、紙製品化の可能性を確信され、紙皿<asanoha>の商品開発がスタートしました。
日本では、衣食住や神事に深く根差してきた「麻」。
それが今や9割を輸入に頼っているという現実に対する危機感と、日本の伝統を継承していきたいという強い思いが、商品開発を知る上で欠かすことができない背景でした。
日本の美意識を映すデザインと食空間に調和する紙皿を

デザインモチーフである正六角形が印象的な「麻の葉模様」は、日本の伝統文様として親しまれてきました。
国産麻を原料に、日本の文化を未来へつなぐというasanohaのコンセプトを視覚的に表現するうえで、このデザインが生まれたのは自然な流れだったといいます。古くから受け継がれてきた願い、知恵、美意識が表現されたこの形は、まさに商品のコンセプトそのものを映し出されているようです。
伝統的な柄でありつつも、紙皿としては斬新なデザインに感じるのもasanohaの魅力です。
デザインの方向性が決まると、次は「食空間でどう使われるか」という視点で形が追求されていったそうです。
ブランドを構成する4種のデザインは、すべて正六角形を軸に構成されています。

これにより、複数のデザインを並べ組み合わせても、無駄なく面を構成することができ、ケータリングやパーティーなど多種多様な食材が並ぶ場面においても、立体的で統一感のある食空間が演出できます。
一枚一枚はシンプルでも、組み合わせ方次第で空間にリズムが生まれ、料理やシーンに合わせた演出が可能になります。

さらに、紙皿の常識を覆す高級感を感じるポイントとして「質感」にはとてもこだわったそうです。
asanohaは、一般的な紙皿の製法とは異なり、専用の型を用いてパルプを漉き上げてつくるモールド製法を採用されています。この製法は手漉き和紙と同様であり、表面にあえて凹凸を残すことで、和紙のような柔らかで上品な質感を生み出されています。
日本製にこだわり、素材・製法・デザインを一貫して追求する姿勢は、長年、素材と向き合い続けてきた繊維専門商社ならではのこだわりを感じます。
また、一般的な紙皿では叶えることができなかった高級感は、食材を引き立て、様々なシーンを彩ってくれるでしょう。
使用後まで考えられたサステナブルの追求

こうしたデザイン性と高品質を兼ね揃えたasanohaは、ケータリングやイベント、ホテルなどのパーティーシーンにおいて、プラスチックに代わる製品として需要を拡大してきました。一方で、開発当初から「紙皿=使い捨て」というイメージと、課題となるゴミの増加や焼却処理時のCO2排出などの問題についても向き合う必要がありました。

これに対し、スタイレム瀧定大阪では、“使い捨てで終わらせない”ための仕組みづくりにも踏み込まれています。
具体的には、ホテルやイベント会場で使用したasanohaを自ら回収し、トイレットペーパーの原料として再生する取り組みを実施。また、利用企業と連携し、食物残渣と一緒に堆肥化させ肥料として循環させる検証も重ねてきているそうです。こうした試みはすでに一定の成果を上げており、紙皿の新たな可能性を示しています。
また、こうして自ら足を運び、使用後の回収・リサイクルのプロセスに関わることで、衣類においても食のシーンにおいても、改めて「分別」が共通課題であることも見えてきたそうです。
分別されなければ、どれほど意図をもってつくられた製品であっても、ただのゴミになってしまう。反対に、正しく分別されれば、次の価値へとつながる資源になる。
衣類のリサイクルと同様、食のシーンにおいても「使う人の行動」が循環の質を大きく左右することを、強く実感したといいます。

サステナブルな製品を生み出すことがゴールではなく、その先にある行動や意識の変化まで含めて、はじめてサステナブルが成立する。その考え方は、使う側一人ひとりへと委ねられています。
今後は、衣類の分野にとどまらず、食空間の領域においても、他社と繋がりながら未来に向けたサステナブルな取り組みの輪を広げていくことを目指していきたいとのことです。
人の生活に切り離せない衣食住を基点に、企業と人との小さな選択と判断を積み重ねていくことが、暮らしのあり方を変え、未来を変えていく。
asanohaは、これからの食空間を考えるうえで欠かせない価値観や気づきを、器という存在を通して伝え続けていくように思います。


FSPJ認定コーディネーター
後藤友希(YUKI GOTO)




