「フィッシュバッハ1819」は、創業者の名前を冠するファミリーカンパニーとして、スイスで創業200年を超えるインテリアテキスタイルのトップブランドです。
スイスのサンガレンに本社を置き、6代目のCEOマイケル・フィッシュバッハ氏とクリエイティブディレクターのカミラ・D・フィッシュバッハご夫妻が、伝統を重んじつつも、時代を見る卓越した審美眼によって、ラグジュアリーでエレガントなテキスタイルを発表し続けています。
日本には、4代目フィッシュバッハ氏により、1971年に「日本フィスバ株式会社」が設立され、以来、本物志向の顧客達に愛されています。
今回は、『フィッシュバッハ1819』の新作発表会に伺い、美しい色彩やハイクオリティな質感を持つファブリックが生まれる背景を紐解いていきたいと思います。東京ショールームのスタイリッシュなディスプレイも見所です。
『Nomadic Journeys(ノマディック・ジャーニー)』〜2024年春夏新作発表会〜
スイスのサンガレンとイタリアのコモを拠点としたデザインスタジオからは、毎年、世界中の国々の文化や歴史的な事柄にインスピレーションを受け、多様なスタイルのラグジュアリーでオリジナリティのあるデザインがシーズンごとに発表されています。
「私たちはみな、かつては遊牧民だったと言われています。自然と密接につながり、季節のニーズに応じて場所を絶えず変化せてきました。」
コレクションのプレゼンテーションは、エキゾチックな遊牧民のインスタレーションから始まりました。
「デジタルノマド」という言葉がありますが、近年はITを活用してリモートで仕事をすることにより、太陽の日差しのあるところに自由に移動できるようになりました。
今回の「ノマディック・ジャーニー」は遊牧民のようなライフスタイル、国家や民族の枠組みを超えた共通の美意識を反映したコスモポリタンなコレクションとなっているとのこと。
ブランドでは、3年ほど前から「土:アース」系に着目されているそうです(画像右)。
デジタル社会では人間は自然への欲求が生じ、インテリアもナチュラル系なものに心地よさを感じる傾向が出ているというのは納得できる流れのように思われます。
かつて、4代目フィッシュバッハ氏は、アフリカやアメリカ、日本など世界中を回り、様々な文化への興味をコレクションに落とし込んでいたそうです。
クリエイティブディレクターのカミラ氏もまた、実際にイランの遊牧民の元に足を運び、素朴で丁寧な手仕事や、自然素材にインスピレーションを得ているとのこと。
デザインスタジオでは人の手によるデザインを重視されているそうです。なぜならば、そういったものにはデザインする人の魂や思いがこめられていて、コンピュータにはないものだから、とのことでした。
カミラ氏による、ドラマティックに次々と繰り出されるプレゼンテーションより、代表的なものをご紹介いたします。
TAGUA(タグア)は麻100%のエレガントなヘリンボーンの生地に、自然の花の形を抽象的に組み合わせてデジタルプリントをしたもの。
透明水彩絵の具とクレヨンを使って、女性デザイナーが、あえて15分で手書きした素朴で個性的なデザインだそうです。
美しさとサスティナビリティとの共生
「フィッシュバッハ1819」は、 2009年に100%ペットボトルをリサイクルしたインテリアファブリックを作った最初のテキスタイルエディターです。
「環境に優しく持続可能な未来に全力で取り組む」ということがフィロソフィーで、今回のコレクションにも多数のサスティナブルなファブリックスを発表しています。
「BENU Recycledコレクション」は古代エジプトのフェニックス「ビニュー」と「Be New!」から名付けられたそうです。
その他にもサスティナブルな天然繊維を使った素材があります。
例えば、「Tibbu」は100%ヘンプが素材で、張りがありしわになりにくく、羽衣のように美しい生地です。
マイケルCEOに伺ったところ、ヘンプはムッソリーニ時代は栽培が禁じられていましたが、近年また使われているとのこと。
ヘンプは水や農薬をほとんど使わずに栽培されており、大気中から大量のCo2を吸収することなどから「環境にやさしく、サスティナブルな自然素材」としても、近年世界的に大きな注目を浴びているそうです。
プレゼンテーションの前後には、来場者はサンプル生地や展示品を手で触り心地を確かめたり、裏をめくって組織を見たり、張りやドレープのしなやかさを確認でき、会場で拝見するからこその醍醐味を感じられます。
ショールームはインテリアのお手本
ショールームの美しいディスプレイは目を楽しませてくれますが、それだけではなく、ファブリックの特性を活かした使い方の提案がされています。
また、小物使いもトレンドを押さえてあるので、飾り方も含めて大いに参考になります。
「 FISCHBACHER1819」では、プレゼンテーションの後には来場者にワインなどの飲み物やフードのおもてなしがあり、スタイリッシュで好評です。
2世紀に渡る成功の秘訣は、すぐに無くなってしまうファストファッションのようなものではなく、哲学を持ったブランドであり、常に時代とともにコレクションをアップデートしている点にあると考えられます。
ブランドロゴもその象徴として、時代に沿うように変化を遂げてきているそうで、2024年4月1日には、伝統を残しつつ、デジタル時代にふさわしい簡潔さと明快さを表現した新たなロゴが打ち出されました。
7代目が経営に加わられ、未来に目を向けているということもあり、益々今後の展開が楽しみです。
TEL:(03)5775-0604
HP:https://fischbacher1819.co.jp/
SNS:Instagram
FSPJ認定コーディネーター
白川 えり子(ERIKO SHIRAKAWA)