1923年、関東大震災の年に初代が京都から東京・京橋に移り、金襴緞子・襖問屋として創業され、まもなく100年を迎える株式会社トミタ(以下トミタ)。
「ひとりひとりのお客様に居心地の良い空間を提供することのお役に立つ」というフィロソフィーを一貫して掲げ、魅力的なインテリア商品を展開していらっしゃいます。
京橋エドグランのショールーム「tomita TOKYO」をお訪ねして、取締役副社長の富田州正(くにまさ)氏 にお話しを伺いました。
拘りのインテリアを堪能できる、世界屈指のショールーム
トミタで扱う商材はどれも大量生産でない「物作り」にこだわったアイテム。
だからこそ、施主に丁寧に説明するショールームは必要で、2016年に京橋エドグランにリニューアルオープンした「tomita TOKYO」は、デザイナーとこだわりぬいて作ったとのこと。
1階は壁装材とファブリックス、2階はイタリアのオーダー家具とラグを中心にコーディネートされたハイエンドの空間を体験できます。
壁装材・ファブリックス・家具・ラグなど多数のブランドを取り揃えており、海外のデザイナーからも「世界屈指のショールーム」と評価されています。
エントランスを入ってまず圧倒されるのは、吹き抜けの壁面に造り付けられたダイナミックなグリッドシェルフです。
シェルフには様々な壁紙やファブリックス、家具、インテリア小物が飾られ、まるで大人の宝箱!「インテリアを楽しむ」というトミタの世界観を感じます。
数多いアイテムを美しくまとめる秘訣は・・・左右方向にカラーをグラデーションにし、コーナーごとにテーマを決めてディスプレイされているとのことでした。
さて、この壁面の内装。2階に展開しているイタリア家具・プロメモリアの創業家の息子、ダビデ・ソッツイ氏が来日された時に、さらさらとパースを描いてくれ、そのアイデアを富田氏が気に入って取り入れたという、素敵なエピソードを伺いました。
ショールームには大切にパースが飾られていました。
日本の美を表現する壁装材「ART WALL LEGEND」
1964年、東京オリンピックの年にオリジナル壁紙コレクションを発行。それ以来、日本を代表する壁紙メーカーとして、和紙を始めとした日本の伝統素材や技術を駆使した商品を発表し続けています。
フラッグシップコレクションは「ART WALL LEGEND(アート ウォール レジェンド」です。
鳥取の和紙や広島の金箔などの作り手とパートナーシップを組み、伝統的な素材である楮や金銀箔に新たな魅力を引き出しています。
ビニール壁紙との大きな違いは、時間の経過とともに風合いの変化で素材の良さがわかるところです。
アートの様に美しく、どのように作られているか興味がわきます。
桐壁紙は福島。桐を薄くスライスして模様のパーツごとに一枚一枚貼り込んだもので、美しいばかりでなく、柔らかく、施工性にも優れたものです。
世界の壁紙とファブリックス
ショールーム1階には、26の海外ブランドのファブリックス、26の輸入壁紙ブランド、オリジナルコレクションの国産壁紙を実際に見ることができます。
コロナ禍で「暮らしの大切さ」が改めて認知されています。
素敵な新作をご紹介いただきましたので、一例をご紹介します。
左上:ボラスタペーター(スウェーデン) :ヴォートアーカイブ 環境壁紙
右上:ボラスタペーター(スウェーデン):人気の「フルクラーダ」はダイニングのアクセント壁紙に。
左下:マニュエル カノヴァス(フランス):ALBA( アルバ )コレクション
トロピカルなで植物柄やシルクロードを旅を想起させるデザインなど、デコラディブなプリントや刺繍で表現したファブリックスのコレクション
右下:ラーセン(USA) :HILLSIDE(コレクション)
ミッドセンチュリーの雰囲気を感じさせ、質感の洗練されたファブリックス、和テイストにも合うコレクション
プロメモリア~クラフトマンシップに裏打ちされたイタリア特注家具
1988年に北イタリアでロメオ・ソッツィ氏により創業されたプロメモリアは、独創性にあふれ、細部へのこだわりのあるハイクオリティな特注家具です。
ソッツィ氏は「家具だけでなく空間全体を自分のスタイルにしたい。」ということで、日本の伝統的な手作りの壁紙を探してトミタを来訪し、気に入られたとのこと。
富田氏もプロメモリアの家具に一目惚れして、取扱いをスタートされたそうです。
プロメモリアの家具は、探しているアイテムを数あるコレクションの中より選ぶことができ、好みの仕上げ材(木、革、ファブリックス)やサイズで作れる、まさにオンリーワンのもの。
もちろん、ショールームのスタッフの方々が相談に乗ってくださいます。
「キッチンが暮らしの中心」というコンセプトでデザインされた、美しく機能的なアンジェリーナキッチンも見逃せません。
こちらは、トミタの桐壁紙にインスピレーションを得て、桐壁紙を貼ったというキャビネット。
まさに、トミタとソッツィ氏の出逢いが成しえた卓越した作品といえるのではないでしょうか。
桐をスライスして手作業で一枚ずつパッチワークするという気の遠くなる作業は、伝統技術に長けた職人技ならでは。
扉を開くとグリーンが覗き、イタリア人デザイナーの遊び心を感じます。
「プロメモリアの家具は、ボタン一つでできるものではないので価格的には高いが、製品価値や作る工程、子供や孫まで使えることを考えると値ごろではないか。椅子やテーブルなど、一つずつ気に入るものを足していけば、その人の個性が出てくる。居心地良い、手触りが良いものに囲まれると、早く帰りたくなる。少しづつ気に入ったものを揃えていってはいかがだろうか。」
という、富田氏の言葉が印象的で考えさせられました。
富田氏にとってソッツィ氏との出会いは影響が大きくて、 「お客様にどれだけよい人生の時間を豊かに演出できるのか。楽しい時間を作れるのか。」という同じフィロソフィーを持ち、理解し合いながら、関係を築いているそう。
例えば、家具の次に展開することになったラグ「SOLSTYS COLLECTION」。
ブランドを立ち上げた、クリストフ氏とジャスミン氏はアーティストであり写真家です。
二人が光と自然からインスピレーションを受けてデザインする、チベットのハンドノット技術(チベタンノット)のラグは、糊が付いていないので劣化せず、時間とともに価値があがっていくタイムレスなラグです。
ラグを敷くと、空間がゾーニングされ、家具が宙に浮かばず、上質な空間を作り上げます。
最後に、トミタのブランドヒストリーはホームページで拝見できますが、企業の真髄を感じられるビハインドストーリーを少し書き添えます。
3代目社長(現会長)の富田正一氏は、若い頃、アイスホッケーのオリンピック選手でした。
海外遠征をした時に個性的な内装の邸宅に招かれることが多く、「いつか日本もそういう時代が来る!」という先見の明でドイツの壁紙の輸入するところから始まったそうです。
やがて、高度経済成長期に流通した大量生産のビニール壁紙でなく、良い壁紙を日本でも作るべきだとオリジナル壁紙コレクションを作り始めました。
そして、現在は、伝統技術が産業として潤うように重責を担っていらっしゃるとのこと。
伝統産業を守り育てるという矜持はすばらしい企業理念だと感じ入りました。
また、トミタでは多数の海外ブランドを扱っていますが、ほとんどが人の繋がりによる紹介によるもの。
ブランドの多くはファミリー経営、量産と真逆の所に価値を見つけ、お互いにリスペクトし合える間柄で、その繋がりを大事にしているとのこと。そういった仲間が少しずつ増えて今の形になったそうです。
ショールームにて、あなただけのオンリーワンを見つけにいらっしゃいませんか?
tomita TOKYO
FSPJ認定コーディネーター
白川 えり子(ERIKO SHIRAKAWA)