九州の玄関口である北九州市は、海と山に囲まれた地形を生かしながら
おおらかで革新的なデザインの建築が多く存在します。
今回は磯崎新作品を中心に食空間も楽しめる建築をご紹介したいと思います。
磯崎新の建築
大分が生んだ偉大な建築家である磯崎新(いそざきあらた)は、国内外に多くの建築を手掛け、2019年には建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞し、日本人としては8人目です。
代表的なものは、水戸芸術館、ハラ・ミュージアム・アーク、大分県立図書館、ロサンゼルス現代美術館他多数。
今回は磯崎新が手掛けた北九州市内の展示場やレストラン併設の施設などを紹介してまいります。
陶磁器フェスタ(西日本総合展示場)
JR小倉駅から徒歩数分とアクセスがよく、様々なイベント会場となる展示場。まず最初に目にする外観は、船のような造形でとてもユニーク。
構造材でもある支柱から張られたケーブルは、デザイン上のアクセントにもなっています。
内部は柱がなく、外観同様にケーブルを使用し天井を吊り、
ライン上に並んだ照明がとてもリズミカル。
毎年「西日本陶磁器フェスタ」が開催され、器好きな人々が集い賑わっています。
九州各地と西日本を中心とした陶磁器の即売会や窯元の逸品展をはじめ、テーブルウェア販売など食空間関連商品が所せましと並び、個性的な店主とのやりとりも楽しいですね。
また今年は鹿児島の工芸や大分の焼酎など、地場のクラフトや食品なども紹介されていました。
美術館・図書館とともに楽しむカフェ・ラウンジ
【北九州市立美術館 カフェ・ミュゼ】
立方体が張り出した非常にインパクトがある外観は「丘の上の双眼鏡」とも言われています。美術館からは北九州の海や山などが一望でき、気持ちの良いロケーションです。
中に入って驚くのは、エントランスが舞台のように感じること。
シンメトリー配置になっていて、天井からの光と照明効果もあり、自然と視線が奥の階段へと誘導されます。
美術展を堪能した後には、併設のカフェ・ミュゼで大きな窓から「響灘」や市内の景色が一望でき、ゆったりと飲食を楽しむことができます。美術展に合わせた特別メニューなどで、美の余韻も感じられそうですね。
カフェ・ミュゼ : https://www.cafemusee.net/
【北九州市立中央図書館 カフェ・ラポール】
小倉城のある勝山公園内に位置し、周辺の緑豊かな環境に合わせたような
銅板葺きの屋根が色鮮やか。天空から建物を眺めると、チューブのように
うねうねと曲がっているのも特徴です。
館内には図書館の他、文学館、資料室もあり内部は教会建築にあるようなヴォールトと言われる曲線の天井が格調高い雰囲気を醸し出し、さらにバラ窓のようなステンドグラスも見応えがあります。
施設内には、本を楽しみながらティータイムも楽しめる「カフェ・ラポール」があり、静かな環境で窓から公園の景色を眺めながらゆったりと過ごせます。
カフェで気に入った本は、借りることもできるのがいいですね。
【北九州国際会議場・イベントホール シーラウンジ】
前述の西日本総合展示場に隣接した施設で、おもにビジネス会議や学会、イベントなどが開催される施設。
カラフルでおもちゃ箱のようなユニークさもありながら、外部階段の手すりに照明が仕込まれているなど、細かな気配りがされています。
会議や学会などで利用した場合のみ使用できる「ホール」や海を眺めながら飲食もできる「シーラウンジ」などがあり、ビジネスの交流にも生かせそうです。
磯崎建築を訪ねて、建物は街並みをつくるものであることを改めて感じました。そして内部に入ったときに、五感で感じる心地よさがありました。
それは、土地の形状や地域色などを綿密に考えて、計算しつくされた設計と技術によるものだと思います。
皆さんも北九州をおとづれた際は、建築も楽しんでみてはいかがでしょうか。
FSPJ認定コーディネーター
田中 宏美(HIROMI TANAKA)