食空間業界を牽引するパートナー企業様のトップにFSPJ認定講師がインタビューさせて頂く対談企画。
第5弾となる今回は、 石川県山中温泉にて、芸術的とも称される漆器を作られている、我戸幹男商店 我戸正幸社長にインタビューいたします。
山中漆器 約450年の歴史や伝統的な技法を紐解くとともに、その高い技術とデザイン性に優れた漆器が生まれた背景についてお伺いするほか、山中温泉の直営店舗より、店内を案内していただきました。
「木地屋商人」我戸幹雄商店の誕生と技術の継承

斬新なフォルムの漆器をプロデュースする「我戸幹男商店」は、1908(明治41)年に山中温泉にて「我戸木工所」の名称で漆器の分業のひとつである「木地屋」として創業されました。
「我戸幹男商店」というブランド名が誕生した背景についてお話しいただくと、そこには山中漆器の高い技術に裏打ちされた伝統的な木地師としての誇りを現代、そして次世代へ繋いでいきたいという思いを感じ取ることができます。
パブルの頃には、大量に売れたといういわゆる山中漆器の器をリブランディングした我戸社長。長く愛される漆器を作りたいという思いからデザイナーとのコラボレーションでその独創的なフォルムの漆器が生み出されているそうですが、そうした器を世に排出するためには、それを支える木地師の高い技術が欠かせません。
その職人の仕事一つ一つに付加価値を付けることで作り手の価値を高め、確かな技術を継承していくために、我戸社長が考えるこれからの木地師職人のあり方についてもお聞きしました。
美しい木目に裏打ちされた山中漆器の技術

続いて、美しい木目が特徴の山中漆器の伝統的な製法を、我戸社長に動画や実物をお見せいただきながら解説していただきました。
「縦木取り」で作られる山中漆器は、器の高さが初めに決まることが大きな特徴であり、デザインのこだわりを生む最初のプロセスとなっているのだそうです。
その「縦木取り」が可能にした「加飾挽き」、木地の美しさをより一層引き立たせる「拭漆」といった山中漆器ならではの技法があってこそ、「我戸幹男商店」のデザイン性の高い漆器が生まれていることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
またその商品シリーズのネーミングにも、我戸社長の拘りがあるとのこと。デザインの美しさを表現するためのワード選びは、最も苦心されているそうです。
直営店「GATO MIKIO/1」

最後に、我戸社長に直営店である「GATO MIKIO/1」を案内していただきました。
店内には12名のデザイナーが生み出した商品が並び、ipadを使って自分だけの器をオーダーできる店舗のみのサービス「GATOMIKIO/individual」、スタイリッシュな内装…と漆器の新たなイメージを彷彿させます。
店舗入り口のタイルには、我戸社長の遊び心も感じられます。
最後に新たな商品カテゴリー「GATOMIKO/relaunch」についてもお伺いしました。使われなくなっていた古い良質な材料にも目を向け、新たな命を吹き込む取り組みは近年の「ウッドショック」に対して始まったとのことです。
テーブルコーディネーターの感性を刺激するような漆器の数々。全国のライフスタイルショップや雑貨店などでのお取り扱いもあるそうなので、ぜひ一度は手に取ってそのデザインや木地の質感に触れてみていただけたらと思います。


食空間プロデューサー/ FSPJスクール銀座校講師
伊藤 裕美子(YUMIKO ITO)